【人事担当者必見】退職代行対応マニュアル〜退職代行を撃退できるってホント?

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退職代行は断れる?拒否できる条件や撃退方法を詳しく解説

ここ数年で世間での認知度が格段に上がっている「退職代行」ですが、退職の申し出を断れる場合があることをご存知でしょうか?

ちなみに筆者は企業の人事として勤務している時に何度か退職代行を“撃退”したことがありますが、退職代行対応マニュアルとして、どんな時に対応を拒否できるのか、撃退方法は具体的にどうすれば良いのかなどについて詳しく解説していきます。

退職代行の対応でお悩みの人事担当者は必見です!

退職代行の法的根拠

退職代行の法的根拠

人事の仕事をしていると「退職の申し出は断ることができない」という話をよく聞きますが、退職代行を使った退職の申し出は断ることができるのでしょうか?

拒否できる条件や撃退方法について触れる前に、まず退職代行は何に基づいてなされるのか、という法的根拠についてチェックしておきましょう。

退職代行の法的根拠を押さえておくことで対処方法は自ずと見えてきます。

退職代行の種類を知っておこう

人事担当であればご存知の方も多いと思いますが、最初に「退職代行の種類」について触れておきます。

退職代行は運営者別に「弁護士の退職代行」「労働組合の退職代行」「民間企業の退職代行」の大きく3つに分けることができ、それぞれ法律によって対応可能な業務が定められています。

退職は法律行為である

そもそもの話として「退職すること」は法律的にみると「雇用契約の解除」ですので、基本的に「法律行為」に当たります。

そして「法律行為」については、弁護士法により弁護士以外の者が報酬を受け取って業務を行うことが禁じられています。

【弁護士法 第72条】弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

【出典:e-Gov

退職代行では依頼人の代わりに退職という法律行為を行うことになりますが、このように弁護士法では弁護士のみに代理行為を認めています。

退職は労働問題でもある

一方、退職は労使間の「労働問題」でもあります。

労使間の労働問題の解決については先の弁護士法とは別に、憲法および労働組合法に基づき労働組合が組合員のために会社と交渉することが可能です。

【憲法 第28条】勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

【出典:e-Gov

【労働組合法 第6条】労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。

【出典:e-Gov

退職代行でも労働組合が団体交渉権を行使し、組合員の代わりとなって会社と交渉することが認められてます。

法的根拠を持つ退職代行、持たない退職代行

ここまで見てきた通り、退職者の代わりとなり会社と退職交渉を行うことができるのは「弁護士および労働組合の退職代行」のみとなります。

先に退職代行には3つの種類があるとお伝えしましたが、弁護士や労働組合でない民間企業の退職代行には会社と退職交渉を行う法的権限はありません

それぞれの退職代行で可能な業務をまとめたものが以下の表です。

業務内容 民間企業 労働組合 弁護士
法的根拠 なし 労働組合法 弁護士法
退職者の意思の伝達
できる

できる

できる
退職者の代わりに交渉 ×
できない

できる

できる

民間企業の退職代行で認められているのは、退職者の要望を会社へ伝言する「使者」としての役割(意志の伝達)のみです。

例えば、退職日や有給消化など退職に関する交渉事があっても、退職者の要望として会社に伝えることに留まります。

退職代行の種類は会社として退職代行への対応を考える上でとても重要なポイントとなりますので、ぜひ記憶に留めていただければと思います。

【ポイント】
民間企業の退職代行は意思の伝達のみ可能!

退職代行に対する対処方法

退職代行に対する対処方法

では次に、退職代行の連絡が来た場合の対処方法について具体的に見ていきましょう。

「退職の申し出を会社側は断ることができない」ということはよく聞きますが、それは本人もしくは法律上認められた者からの申し出があった場合に限ります。

退職代行の対処方法は、法的根拠の有無で大きく異なりますので、運営者をしっかりチェックするようにしてください。

退職代行で断れないケース

結論を言えば、弁護士や労働組合の退職代行は断ることができません

法的根拠を持って退職代行を行なっていますので、退職の原則である「退職の申し出を会社側は断ることができない」ということになります。

まれに退職代行は弁護士だけ対応すれば良いといった誤った認識を持っている人もいますが、労働組合の退職代行も対応する必要がありますので注意しましょう。

例外で断れるケース

原則、退職の申し出を会社は断ることができませんが、働き始めから1年を超えない契約社員で、病気やケガなど勤務が継続できない「やむを得ない理由」がない場合は、退職の申し出を断ることができます。

ただ、法律上断っても問題がないというだけで、働く気のない人が会社に残っていてもプラスになるとは思えませんので、実務上は退職を受け入れ、粛々と退職手続きを進めるのが最善の選択になるでしょう。

退職代行で断れるケース

民間企業の退職代行は、交渉権限も代理権限もない「ただの使者」に過ぎませんので、連絡があっても話を聞く必要はなく、やり取りを断っても全く問題ありません。

実際、筆者はある企業の人事担当をしていましたが、以前、大手の民間退職代行業者より掛かってきた電話に

「代理権限のない方とはお話しはできませんので社員本人へ直接確認させていただきます」

と伝えて電話を切り、本人と直接連絡を取って通常通りの退職手続きを行ったことが何度かあります。

退職代行の撃退法

退職代行の撃退方法

退職代行に従業員の退職を左右されるのは望ましくないとお考えの会社もあるでしょう。

そこで「退職代行の撃退方法」について流れに沿って解説していきます。

撃退の流れ

すでにお伝えしている通り、撃退できるのは「民間企業」の退職代行のみです。弁護士や労働組合の退職代行は対応する必要がありますので、その点は注意してください。

step
1
相手先を確認する

退職代行から連絡があればすぐに対応せず、まずは運営会社を確認してください。

相手先の名称(社名・退職代行名など)を確認したら、担当者不在などで今対応ができない旨を代行会社へ伝えましょう。

step
2
運営会社を調べる

次に、相手先の名称からネットで運営会社を調べます。

弁護士や労働組合の退職代行の場合は、通常は弁護士事務所や労働組合を名称を名乗って連絡が入るはずです。

その場合はインターネットで検索し、その弁護士事務所や労働組合が実在することを確認します。存在が確認できれば退職代行を受け入れて構いません。

注意すべきは「退職代行◯◯です」と名乗ってくる場合。

社名を名乗らず退職代行名を名乗ってくるケースは民間企業の退職代行の場合がほとんどですが、念の為、退職代行会社のホームページの「運営者情報」や「特定商取引法に基づく表記」のページを確認してください。

これらのページの表記が「株式会社」や「合同会社」となっている場合は民間企業の退職代行です。

ホームページ上に「弁護士監修」や「労働組合提携」といった記載がある場合もありますが、法的根拠を左右するのは「運営会社」となりますので、監修や提携といった文字には惑わされないようにしてください。

また、最近は巧妙に労働組合の運営を偽装している民間企業の代行会社も存在します。「運営者情報」や「特定商取引法に基づく表記」の内容はしっかり確認しましょう。

step
3
退職代行への対応方針を決める

連絡のあった退職代行が弁護士や労働組合の場合は、必ず対応が必要となりますが、民間企業の場合は対応する・しないは貴社の考え方次第です。

東京商工リサーチが26年4月に発表した調査結果では、弁護士や労働組合以外の「退職代行」から連絡があった場合は「違法の可能性があるため取り合わない」とした企業が30.4%を占めています。

筆者が人事担当だった時は、無権代理者(代理権がないにもかかわらず法律行為をする者)の主張により退職手続きを行うことはコンプライアンス上問題があるとの考えのもと、上司の了解を得た上で民間の退職代行には対応しませんでした。

しかし、退職したいという者に対してあらためて意思を確認するのは無駄なため、民間の退職代行であっても対応するという考え方もあるでしょう。

退職の申し出を断れる
退職代行会社はどこ?

民間企業の退職代行会社一覧

交渉権限も代理権限もない民間企業の退職代行ですが、具体的にどういった業者があるのでしょうか?

退職代行会社は全国に100社以上ありますが、実は弁護士や労働組合の退職代行は少なく、全体の約6割は民間企業が運営する退職代行となっています(帝国データバンク調べ)。

ちなみに弁護士の占める割合は全体の35%、労働組合は5%程度です。

民間企業の主な退職代行一覧

やり取りを断ることができる「民間企業運営の退職代行」のリストについてまとめておきますので、貴社での今後の対応の参考にしていただければと思います。

  • 退職代行 EXIT(EXIT株式会社)
  • 退職代行 モームリ(株式会社アルバトロス)
  • 退職代行 ABAYO(株式会社アクロサポート)
  • 退職代行 やめたらええねん(株式会社熱狂スタイル)
  • 退職代行 やめるもん(株式会社バトンタッチ)
  • 退職代行 ネルサポ(ネルサポート株式会社)
  • 退職代行 SARABA(株式会社スムリエ)
  • 退職代行 OITOMA(株式会社H4)
  • 退職代行 ニコイチ(株式会社ニコイチ)
  • 退職代行 辞スル(株式会社シーズ)
  • 退職代行 即ヤメ(ネルサポート株式会社)
  • 男の退職代行(株式会社インクル)
  • 退職代行 わたしNEXT(株式会社インクル)
  • 退職代行 Jobs(株式会社アレス)

まとめ

退職代行は断れる?拒否できる条件や撃退方法を詳しく解説

退職代行会社からの退職の申し出があった際の対処法として、拒否できる条件や撃退方法についてご紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか?

退職代行には3つの種類(弁護士・労働組合・民間企業)がありますが、退職代行からの連絡が来たからといって、必ず対応しなければならない訳ではありません。

業務内容 民間企業 労働組合 弁護士
法的根拠 なし 労働組合法 弁護士法
退職者の意思の伝達
できる

できる

できる
退職者の代わりに交渉 ×
できない

できる

できる

相手側が交渉権限や代理権限を持った代行会社なのかを見極めて、対応すべき場合(弁護士・労働組合の退職代行)と対応の必要がない場合(民間企業の退職代行)に分けて対応するようにしましょう。

記事の監修者情報・著者情報

長谷部 亮

大手企業の人事総務部門に長年勤めた経験を持つ人事総務のスペシャリスト。退職後は労働問題専門のシンクタンク「広域ユニオン総研」の代表として活動。退職代行サービスに関する諸問題についても深い造詣を持つ。