一般的に『管理職』と言えば、一般の社員よりも立場が上であり、一定の権限を有する者を指します。しかし、中には『名ばかり管理職』と呼ばれるものも存在し、企業における問題のひとつとして取り上げられることが少なくありません。
そこで今回は、この『名ばかり管理職』について、どのようなデメリットがあるのか、万一『名ばかり管理職』にされた場合にどうすればよいかについて見てみることにしましょう。
名ばかり管理職とは
『名ばかり管理職』とは、名目上は “管理職” として扱われるものの、実態は 管理職という立場や中身が伴っていない状態にある のが特徴です。
本来、課長や部長には立場上、役職に相応の権限があるものですが、『名ばかり管理職』の場合、重要な決定を下す力は与えられていないことがほとんどです。
では、なぜ『名ばかり管理職』のような偽りの“管理職”が生み出されてしまうのでしょうか。そこには会社側のメリットが関係しています。
名ばかり管理職 を導入する会社側のメリット
管理職に対しては、単なる労働者とは異なることから労働基準法の規定が適用されず、例えば、残業代や休日手当などの一般社員には支払われる割増賃金を管理職には出さなくも良い ということになっています。
つまり『名ばかり管理職』へ “昇格” させることによって、残業をさせても残業代を支払う必要がなく、賃金の支払いを圧縮することができる ため、人件費を抑制したい企業から悪用されているわけです。
そして、役職を付けるだけで安く人を雇える『名ばかり管理職』を使った、この “人件費抑制の手口” は決して珍しいものではありません。
名ばかり管理職の社員側のデメリット
会社側のメリットの逆が、そのまま『名ばかり管理職』の社員側のデメリットになり得ます。
課長や部長といった役職はあっても、裁量を持たされているわけではありませんので、業務上でできることは一般社員とほとんど変わりありません。したがって『名ばかり管理職』では 仕事の広がりは期待できず、まさに名目上の存在 と言えるでしょう。
さらに厄介なのが、業務時間が給料に反映されない ということです。
2019年4月から管理職にも労働時間管理をすることが義務付けられるようになりましたが、管理職には経営者同様に『労働時間』という概念が元々なく、例えば、月に大量の残業をしたとしても給料が増えるわけではありません。
通常、管理職になると、業務的には権限が増し、賃金的にも残業代を上回る分が役職手当で補てんされるのですが、『名ばかり管理職』の場合は、裁量や手当が増えるわけでもなく、単に残業代がカットされるだけですから、社員側のメリットはなく、ほとんどの場合で 違法 となります。
名ばかり管理職と認められる場合
このように 『名ばかり管理職』は違法性が高く、裁判に訴えることで、業務内容の改善やそれまでの未払い残業代を請求できる可能性があります。
管理職は本来、経営方針や重要な決定事項に参画する権限や労務管理における指揮監督ができる者であるべきです。そういう観点では、勤務時間における裁量を有しているかどうかや賃金などが一般社員と比べて相応しい待遇が与えられているかが、管理職として適切に処遇しているかの基準となります。
もしもこれらの基準に該当しない場合は、裁判で『名ばかり管理職』という判断が下る可能性が高くなるでしょう。
名ばかり管理職になっていませんか?
例えば、営業課長やレストランの店長、マネージャー職など一応の管理職になったものの、待遇は一般社員の時と変わらず、重要な決定にも関わっていないといったことはありませんか?
本来あるべき権限や待遇がない『名ばかり管理職』に置かれていたという事例は決して少なくありません。
昨今、社会的に『名ばかり管理職』が問題視されるにつれて、徐々に是正も見られるようになってきてはいますが、いまだ『名ばかり管理職』は中小企業・大企業を問わず数多く存在します。
『名ばかり管理職』は、長時間労働で身体を壊したり、過労死に至ってしまったりするリスクもはらんでおり、個人で対処していくことが難しい問題でもあるため、放置せず、弁護士などの専門家を交えて適切に対応していく ことをお勧めします。